そのくちづけ、その運命
はぁ、はぁ、はぁ

やっとの思いで最寄り駅にたどり着いた。

2年ほど前に完成した新しい駅舎だ。
ピカピカに磨かれたフローリングに私の服から滴がしたたり落ちる。

休日だからか、これから家に帰って食事をとるであろう家族連れや、隣接の駅ビルで買い物を終えたばかりだと思われる若者たちのグループなど、駅の構内は多くの人が行き交っている。


人々が通りがかりに怪訝な目で私の方を見ているのがわかる。


そりゃそうか。

こんな雨が本降りの日に傘も持たずにずぶ濡れびしょびしょで…

何やってるんだろう…。
私、注目されるの嫌いなのに。

自分の後先の考えてなさには本当に嫌気がさす。

とぼとぼと駅の構内を歩きながら、近くにあった長椅子に腰を下ろす。

ぼうっとした頭で、先ほどのシーンを思い起こす。

真人くんの唇の感触と、彼の視線――


思い出すだけで顔が赤くなるのを感じる。

あんな近くに男の人がいたことも初めての体験だった。

彼の整った顔が、まっすぐに私を見つめていた。


自分の身に起きたことなのに、どうも信じられない。

私、告白された…?

あの、私が最初に見惚れちゃってたあの人に…


……でも、どうして私なの?
教えてよ、真人くん――…

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