そのくちづけ、その運命
「え?!どうしたのいきなり!」

文香が心底驚いたように私の顔を凝視してくる。

「実琴からそんな話ふってくるの初めてじゃんね?」


「うん、そうなんだけど…」

文香は女の私から見てもかわいいと思う。
ぱっつんに揃えられた前髪も、栗色に染められた髪も文香の素顔によく似合う。

一見最近の若者っぽく派手さもあるが、本性は意外と真面目なので、そのギャップも面白くて好きだ。


それでいて、自分を飾らずに、誰とでも対等に向き合うことができるのは、異性からも、もちろん同性からもポイントが高い。

隣を歩く文香の横顔を見ながら、なんとなく自分の友人について分析してみる。

「いるよ」

「そうなの!!?」

「うん。1か月前だから、すっごい最近だけどね。
バイト先の人。」

「へぇ!教えてよー」

「だって実琴人のこういう話好きじゃないでしょ?」

ばれてたか。さすが、よく見てる。

でも、今となっては、あのときの自分はただ単に恋愛をしている人たちをひがんでいただけな気がする。

羨ましかっただけとか…

ひゃー、恥ずかしいな私。


「で!どんな心境の変化ですか?」

文香がにやにやしながら顔を覗いてくる。




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