そのくちづけ、その運命
「え?!実琴彼氏できたの!?」

案の定、事情を知らないほかの何人かが驚愕の声を上げる。

「ちょ!そんなわけないでしょ!何言ってんの!!」

「えーでもさー、」と文香は私のスマホ画面に表示されている真人くんからのメッセージをじっくり眺めて、
それから言った。

「この切迫感尋常じゃないじゃん。絶対行った方がいいよ」

その目は真剣だった。

おちょくりの色はない。
彼女は本心から、言った方がいいと言っている。そしてそれはメッセージの送り主、真人くんのことも考慮に入れているように感じられた。


文香はこういうとき、本当に力強く背中を押してくれる。

彼女の一言で、ふっと心が軽くなるのだから不思議だ。


そうだ。真人くんが私に会いたいと言ってくれている。

私だって

……会いたい。

今日は割と緩いスケジュールで、2限と3限に講義が入っているだけだ。
そのあとはフリー。

16:00まであとあと約3時間と少し。

私は、またもや悩みに悩んだ末、

『分かりました』
と、あえて敬語で、短い返事を送った。

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