そのくちづけ、その運命
横を見ると、当たり前のように真人がいる。
肩を並べて、―――恋人同士の距離で、私たちは海岸沿いを歩いている。


真人の内定祝いに、どこか旅行しようという話になり、どうせ行くなら海のそばがいいと私がリクエストしたのだ。四方を山に囲まれた地元のため、人一倍海への憧れが強い。

それには真人も同意してくれた。


今日は滞在2日目、朝日を拝むために、早朝5:00に起きて6:00にはホテルを出た。
そして二人で朝の海岸を散歩している。

暖かい陽気になってきたといえ、朝はさすがにまだ冷える。ホテルの浴衣でそのまま出てきてしまったので余計にそう感じた。しかし、私たちは寄り添って、砂浜を足の裏に感じながら軽やかな足取りで歩いていた。



朝日に照らされた水面が黄金に輝いている。

なんと美しい光景だろう…

そして隣には真人がいる。
そのことが奇跡のようだと思わずにはいられなかった。


海のさざ波が心地よく耳に響く。



私は、人を好きになる喜びを、その人に自ら何かしてあげたくなる気持ちを初めて知った。


それは予想をはるかに超えて、ピュアな気持ちだった。

そこは、互いの利害の一致とか、そういったエゴが一切介入しない世界だったのだ…

< 64 / 66 >

この作品をシェア

pagetop