そのくちづけ、その運命

無意識に見つめてしまっていたらしい。
真人と、ふいに目が合った。

ふっと優しい笑みがこぼれる。大好きな顔だ。

「ん?どうしたの」

その問いかけに、「なんでもない」と返事をする。

「……幸せだと思っただけ」

「ふふふーうれしいなぁ」
彼はそう言って、本当にうれしそうに横からハグをしてきた。

うぅ、むずかゆい。

…だけどかわいい。

「実琴、大好き。ずっと一緒にいようね」

「うん」

私はぎゅっと彼を抱きしめ返した。

私の心臓は

トクン、トクン、トクン、トクン、と規則的なリズムを刻んでいる。
少しだけ、いつもより速い。

そりゃそうだよね。大好きな人と、抱きしめ合っているんだから。

それから、いわば仕返しのように、私は真人の胸元にぐっと耳を押しあてた。

トクン、トクン、トクン…

真人の心臓の鼓動も同じくらい速くて驚く。


「真人ー、真人も心臓の音速いね」

「んー??ばれたかー」

そう言ってまた笑う。

< 65 / 66 >

この作品をシェア

pagetop