そのくちづけ、その運命
現れたのは若い青年だった。もしかしたら同い年くらいかもしれない。
二十そこそこの人がひとりで来店するのは比較的珍しい。


Tシャツにジーンズ。ずいぶん軽装だ。
…って私が言えないか。

かばんも持っていないようだった。
ファミリーレストランに来るにはややラフすぎるその格好に気をとられながら――

なんだろう、この感じ。

自分の中にもう一つの感情が湧く。

自然とその青年が持つオーラに見入っていた…。
こういうのって、オーラっていうのかな。
いや、正確にはそういう抽象的なものは目には見えないはずなんだけど、
なんていうか、その人自体、存在そのものを見つめざるを得なかった。

つまり。

総合すると―

私はなぜか突然現れたその人に見惚れてしまっていた。
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