おくすり
カチッ
カチッ
放課後になり、2人きりの教室にホッチキスを留める音が響く。
「青井くんはいつも生徒会でこんな仕事してるの?大変だね…いつもありがとう」
「いやいや、本当は皆で分担なんだけどね…今回はみんな忙しくてさ。僕一人だったんだ。終わるかどうかちょっと不安だったけど、神代さんが手伝ってくれたからもうすぐ終わりそう。
こちらこそありがとう!」
「いやいや…役に立ててよかったよ!」
そもそも私は雑用仕事が嫌いじゃない。
むしろ単調な仕事は好きだ。
何かアイデアを出す仕事とかは苦手だけど、ホッチキスを留めるくらいなら任せてほしい!えっへん!
「それにしても、次期生徒会会長候補だなんて、青井くんすごいなぁ!尊敬しちゃうよ。おまけにクラスの委員長で頼れるし大人っぽいし。」
「あはは。ありがとう。
そんなに褒めてくれるなんて思ってなかったなぁ。神代さんもいつも周りの人のことを気づかってるよね。
道路で重い荷物を持ったおばあさんを助けてる神代さんを見て、僕は神代さんに惹かれたんだよ。」
「え…!見てたの?
恥ずかしいなぁ。声かけてくれれば良かったのに…」
「あはは、ごめんね。
…神代さんは何が好きなの?」
「何が好き?んー、そうだなぁ。
食べ物だとチョコレートが好きだよ!」
「あ、じゃあ今度パフェ食べに行かない?この近くにデザート屋さんが出来たらしいんだ。僕も興味があって。」
「それいいねっ!!」
お互いにお互いの話を聞いて盛り上がっている最中、私はふとお兄ちゃんのことを思い出した。
お兄ちゃんは私にとってすごく大切な人。
もしかしたら、親と同じくらい…いや、それ以上に大切かもしれない。
きちんと話しておいた方がいいかもしれない。