夏風
まるで今からご褒美を貰う子供の様にキラキラとした眼差しでこちらを見てくる。
「え、いないよ」
「え〜!なんでなんでなんで〜!!」
いやいやいや、そんな事言われても困りますよ、百合さん。いない者はいないんだもの。
「なんでっていわれても…今は仕事で忙しいの!恋愛なんかにうつつを抜かしていてる場合じゃありませ〜〜ん」
百合はつまんないの〜といって頬を膨らませた。
「そんなん言ってるん百合はどーなのよ??」
「え」
あ、この子好きな人いるな。
「へ〜?好きな人いるんだ〜???へ〜?百合は分かりやすいな〜」
顔を真っ赤に染める百合をみてニヤニヤとしてしまう。恋してるのか、可愛いなぁ。
百合は美人だ。
いまにもこぼれ落ちそうな黒目にスッと綺麗な鼻筋。形の整った唇、肩より伸びたサラサラの髪からはシャンプーのいい香りがする。
スラッとしたスタイルに手足も長い。
デザイナーじゃなくてモデルになればいいのにな。と誰もが思うだろう。
そういえば高校生時代ほんの少しだけモデルをやってたって言ってたっけな。
最近また一段と可愛くなったなと思ったら恋したのか。恋は人を可愛くする魔法みたいだ とくさいことを考えてしまいクスッと笑ってしまう。
「も〜…何笑ってんのよ…」
「ごめんごめん、可愛いなって思って」
「馬鹿にしてんの…」
「してないって〜」
百合は容姿も良いのだが性格も良い。
人の事を第一と考えて、困ってる人がいればすぐ助けに行く。いつも輪の中心にいて周りにいる人はみんな百合に惹かれていく。
私は百合みたいに可愛くも無いし人を惹きつける魅力もない。
もし困ってる人がいたとして自分が急いでいたら どうせ誰かが助けれくれるだろう ときっとその場を去ってしまう。
私は人と話すのがあまり得意ではなく、人見知りだ。入社した時も周りは仲良くなって1人ぼっちでいた所に百合が話しかけてくれた。
私も百合の魅力に惹かれたうちの1人だ。
彼女がこんな私の友達になってくれて感謝しかない。この会社に入ってよかったな思う一つの理由なった程だ。