取り込む家
☆☆☆

3時間の仕事は瞬く間に過ぎて行った。


1日のほとんどを掃除に費やしていたため、背中には汗が滲んできている。


特に最初のモップがけは体力が必要だった。


普段は気にも留めないような仕事でも、こんなに大変なんだと改めて理解できた。


「尾崎さん、お疲れ様。これ、持って帰って彼氏と一緒に食べな」


牧野さんがそう言い、あたしにタッパーに入ったチャーハンを差し出してくれたのだ。


その香りに途端にお腹がグーと鳴りだして、あたしの顔は一気に熱くなった。


「もらっても、いいんですか?」


「間違えて作り過ぎちゃった分だから大丈夫だよ。それに研修期間は給料も出ないしね」


そう言い、牧野さんはあたしの手にタッパーを押し付けた。


あたしはそれを慌てて受け取ると、頭を下げた。


「あ、ありがとうございます!」
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