取り込む家
彼らが暮らし始めて初めて家は家として呼吸をはじめたのだ。


明かりが灯り、声が聞こえてきて、家具が搬送され、生活ができていく。


そうすることで家は家として命を宿る事になった。


俺はベッドの上でぼんやりと天井を見上げていた。


そう考えてみれば、この屋根裏部屋は俺がいた時から呼吸をしていたのだろう。


屋根裏部屋は屋根裏部屋として、ちゃんと生きていたのだろう。


……俺はどうだ?


俺は自分の心音と呼吸音に耳を傾けた。


きっと生物学的に言えば『生きている』という部類に入るのだろう。


だけど俺は死んでいた。
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