取り込む家
☆☆☆

小説を読み始めるとつい夢中になってしまう。


それは以前の俺と変わらない部分だった。


俺は小説を読み進めながら自分の名前を思い出していた。


常山翔也(ツネヤマ ショウヤ)。


それが俺の名前だ。


だけど、まだそれ以外のことを思い出す事はできていなかった。


以前の生活すべてを思い出すまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。


休憩も挟まずに小説を読み切った俺は大きく息を吐き出した。


さすが有名作家。


文章やキャラクターにブレがなく、綿密に練られた密室ミステリーには感服する。


しばらく本の余韻に浸っていたい気分だったが、体の痛みがそれを阻止した。


ずっと無理な体勢で本を読んでいたから、体中が悲鳴を上げている。


俺はベッドへと上がり、そのまま横になった。
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