取り込む家
そこで初めて気が付いた。


料理をする側の人間は、料理を食べてくれる人の事を常に考えているのだと言う事に。


咲は俺の事を考え、そして俺の両親の事も考えて料理をしてくれていたんだ。


そう気が付くと、途端に胸の奥が痛んだ。


こうして先の立場に立ってみると、咲が怒った気持ちも痛いくらいに理解できた。


「ただいま」


自己嫌悪に陥っていると、そんな声とともに玄関が開いた。


「おかえり!」


俺は大きな声でそう言い、玄関にかけ出た。


咲が驚いたように目を見開いて俺を見る。


「そんなに慌てて出て来て、どうしたの?」


「別に……なんでもないけど……でも……」


いざ謝ろうと思うとやっぱりうまくいかない。


俺は咲の背中を押してリビングへと向かった。


リビングのドアを開けると同時にパスタの香りが鼻をくすぐる。


「え? これ、優生が作ったの!?」


咲が更に驚いた声をあげてそう聞いて来た。


「うん……」


「嘘、優生ってこんなすごい料理作れたんだ!?」


「いや。頑張って、調べながら作ったんだ」

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