取り込む家
その笑顔にあたしはどう反応していいかわからない。


立花さんの笑顔は昔から変わらない。


その笑顔をあたしに向けて、あたしと手を繋いで歩いていた日のことを、彼も忘れてはいないだろう。


「咲、バイト先の立花さんだよ」


「……はじめまして」


自分でも驚くくらい小さな声が出た。


咄嗟にみんなから視線をそらし、テーブルの上を見つめてしまう。


「咲、どうかしたか?」


「別に、なんでもないよ」


優生にそっけなく返事をしてから、そっと立花さんを盗み見た。
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