取り込む家
サキが誰と付き合おうと、自分の手の届く女じゃないことはもう十分に理解しているのに。


「だけど俺たちは互いに嫌いになって別れたわけじゃない」


タチバナはサキにグッと身を寄せた。


サキはとっさに逃げようとするが、遅かった。


その両腕はタチバナによって掴まれてしまった。


「離して。別れた理由は色々あるけど、あたしの気持ちはもうないことだけは確かなんだから」


「本当にそうか? 別れた後でも俺の事を気にしていたって、高校時代の友人から聞いたぞ」


タチバナが真剣な表情でそう言うが、サキは大きくため息を吐き出した。


「それももう何年も前の話。別れ方が最低だったから気にしてただけ」
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