取り込む家
サキの手に視線を向けると、病院でよく見かけるナースコールが置かれていた。


「ここは……?」


「病院だよ」


サキが俺の手を握りしめてそう言った。


「病院……?」


「優生は事故にあって一か月近く眠ってたんだよ。ほら、動くから点滴も外れちゃったじゃん」


サキにそう言われ始めて自分の右腕に血が流れている事に気が付いた。


事故?


一か月近く眠ってた?


サキは一体なにを言ってるんだろう?


そもそも俺はユウセイじゃない。


俺は翔也だ。


そう言いたいけれど、サキの手の温もりを感じると言葉にならなかった。
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