取り込む家
いくら思い出そうとしてみても、真っ暗な闇の飲まれてしまってなにもつかめない。


「ユウセイ、大丈夫?」


眉間にしわを寄せて考えて混んでいると、サキが俺の手を握りしめて来た。


小さくて柔らかくて暖かなサキの手。


「思い出せないんだ……」


「事故のショックで記憶障害が起きてるって、先生も言ってた」


そうじゃない。


事故のショックなんて関係ない。


俺は左右に首をふり、立ち上がった。


「ちょっと、トイレ……」
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