取り込む家
サークルらしく、映画を上映し始めたようだ。


今物音を立てればきっと気が付いてくれる。


俺はすぐに本棚へと近づいた。


口を起用に使って一冊の本を引っ張り、そのまま床へと落とす。


ドスッという鈍い音が響く。


俺は再び穴を覗いた。


下の彼等に反応は見られない。



映画に没頭してしまっているのか、ちょっとやそっとの物音じゃ気が付かないのかもしれない。


もう一度音を立ててみよう。


そう思い、本棚へ向かおうとした時だった。


テレビ画面からドーン!という大きな爆発音が聞こえて来て、俺は動きを止めた。


彼等から歓喜のどよめきが沸き起こる。


よく耳を澄ませてみると、見ている映画がアクションものなのだとわかった。


尚も大きな音は続いていく。


これじゃ音を立てても気が付いてもらえない。


俺はそう思い、小さく息を吐き出したのだった。
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