取り込む家
☆☆☆

結局、俺は立花の口車に乗ってしまったことになる。


でも、大切な先を侮辱されたままでいることはどうしても悔しかった。


2人で入った飲みやはバイト先の近くにある、こじんまりとした店だった。


カウンター席があるだけの小さな店の片隅で、男2人が肩を寄せて飲む。


その光景はとても寂しいものだったのだろう、店主の男性が焼き鳥をごちそうしてくれた。


「これが俺の彼女」


そこそこお酒が入って来た所で、俺はスマホで撮影した咲の写真を立花に見せた。


あの家に引っ越してきてすぐに2人で撮ったものだった。


咲と俺は玄関先で照れくさそうに微笑んでいる。


これから始まる2人きりの生活に幸せオーラが全開だ。


「まじかよ」


咲の写真を見た立花がそう呟き、持っていた端を落としてしまった。


店内にカランッと空しく響く箸の音。
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