あの日の君を忘れることなんてできない
プロローグ
私の隣の席はいつも空いていた。

この席はいつになったら使われるんだろう。

自分の役目を果たさないまま1年が過ぎちゃうのかな。

もうすでに夏も終わりに近づいていて…

どんな人が使うはずだったのか。

名前だけは聞いたことがある。

松永澪音くん。

綺麗な響きだなって思ったから、よく覚えてるんだ。

れお、れお、れお。

綺麗な名前だなあ。

きっと、名前のような爽やかな人なんだろうな。

そう夢見心地に考えていた私。

9月に入り、やっと登校してきた彼。

私は目を疑った。何かが違う。

私の予想とは真逆の人だったから。

爽やかさなんて一欠片もなく、

ほぼ金に近い茶髪。

両耳に三ヶ所ずつ開いたピアス。

胸ボタンはだらしなく開いて、

中からは黒いTシャツが覗いている。

こんな人が私の隣に??

怖すぎて普通の授業なんてできないでしょ!

ごめんなさい、最初はそう思ってたんです。

だけどね、すぐ怖い人じゃないってわかったよ。

見かけこそ、まあ、あれだけど…

心は誰よりも優しいって気づいた。

だから、好きになったんだと思う。

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