2人の王女と2人の騎士
ゆったりとした音楽が流れる中ステップを踏んでいく。剣の稽古よりは劣るけど、こういった体を動かす事は大好きだ。
「ね、ダンスは文句ないでしょ?」
「まあ…優雅さには欠けますが」
トゲのある言い方だけど顔は笑っている。普段は怖い顔しているけど、たまに見せるこの笑顔がたまらない。
それに微かに香る匂い、鍛え抜かれた厚い胸板…。どれを取っても素敵。
昔から好きな人…もし私の想いを伝えてしまったら彼はどんな反応をするんだろう。
「姫様?どうかしました?」
「ううん。…ねぇこういう時くらい昔みたいに話してよ」
いつからだろうか。
クライドがよそよそしく敬語を使うようになったのは。
「いけません。俺と姫様は身分が違います」
「私は子どもの頃みたいに気兼ねなく話したいのにな」
年を重ねて行く程、クライドとの距離が離れていくようで少し悲しい気持ちがある。王女と騎士という身分だし、大人になってくると立場に縛られてしまうのは仕方の無い事なんだけど…。
そんな事を考え、顔を伏せながら踊っていると不意にクライドの足が止まった。
「クライド?」
「…あぁすみません。何でもないです」
どうしたのだろう。外を見ていたようだけど。
気になっていたけど聞くタイミングを逃してしまい、そのままダンスに集中するのだった。