2人の王女と2人の騎士
イグニス…。
今、彼がここに来てくれたら…。
目の前に見えてくる巨大な城に入ってしまえば警備は厳重だろうし、私1人で抜け出すのは不可能に近い。
それに明日の式を迎えてしまえば、私は本当にレイスフォールの王妃に…アレン王子の妃になってしまう。
藁にもすがる思いで来た道を振り返ってみるけど、人の姿はなく、木々だけがゆらゆらとそよいでいた。
そんな事を思っているうちに小高い丘を登り切り、レイスフォール城へ到着してしまう。
間近で見る程存在感があり、まるで要塞のよう。心が折れかけている私なんて簡単に捕まえられてしまいそうだ…。
「着きましたよ」
馬車が止まるとアレン王子は先に降り、手を差し伸べてくるが、いつものように1人で降りる。
「やれやれ、最後まで強情ですね。そろそろ手ぐらい触れてほしいものです」
「…あなたには触れさせません」
「ふふ、そうゆう姫も私は好きですがね。…では参りましょうか」
いよいよ城の門をくぐってしまう。
そうなっては2度と外へ出られないだろうか。
レイスフォールという鳥籠の中に一生囚われてしまうのだろうか…。
ううん、そんなの嫌だ…。
ここが最後の逃げ出す機会なのかもしれない。
後ろにいる兵を倒して剣を奪い、そのまま走り去ろうか…。
今まで従順にしてきたから、少しは油断しているかもしれない。
そう考えると行動出来そうな気がしてきた。