2人の王女と2人の騎士
そんな私に反して、ジェシカは悲しそうな面持ちで下を向いている。
「はい…。陛下が病に伏せってからは全ての公務をお1人で担っていますので…」
「国王様が病に?」
それは初耳だった。
アレン王子もそんな事は一言も言っていない。
国外に知られてしまったら隙をつかれて他国に攻められる可能性もあるだろうから、あまり広まっていないのだろうか。
「でもセラフィーナ様が来てくださって城の皆はとても喜んでおります。陛下もアレン様のお妃様が決まったと聞いて安堵しているようですよ」
「それは…良かったわ」
何だか胸がざわつく。
あんなに憎んでいるアレン王子に同情してしまう気持ちが芽生えてくるようだから。
レイスフォールでの彼って…。
「あの…アレン王子ってどんな方なの?」
「アレン様は…紳士的で優しいお方です。その上剣の達人ともいわれている程強くて、女性たちの間ではとても人気があるのですよ。女性だけでなく、男性からも憧れの存在として慕われています」
「そうなの…教えてくれてありがとう」
ジェシカの言葉が信じられなかった。
私と接する時はそんな態度は感じた事がない。
…でもよく思い返すと、彼は馬車を降りる時手を差し伸べてくれたり、初めて食事を出された時も自ら毒味をしてくれた。
それが私を安心させようとしている行動でなく、素でやった事なのだとしたら?
一体、本当の彼はどちらなのだろうか。
アレン王子に対しての疑問が増々深まる一方だった。