2人の王女と2人の騎士


食事を済ませ、湯浴みを終えるとジェシカが部屋を出て行く。


この時を待っていたのだ。


誰かに気づかれては困るから部屋の扉に耳を立てて誰もいない事を確認し、昼間着ていたドレスのポケットに手を入れて紙を取り出す。



「良かった…ちゃんとある」



折り畳まれた紙を広げると、たどたどしい文字が書かれていた。

この汚い書き方は…あの人しかいない。



「えっと…これが〝あ〟で、次が〝し〟…」


クライドから教わった古代文字を1文字1文字解読していく。

まさかこんなところで役に立つとは思わなかったから、あの時必死に勉強していた自分を褒めたい。



時間をかけてようやく全文を解読し終えると、紙にはこう書いてあった。




〝あしたたすける。まっていろ〟




…と。




「来てくれたのね…イグニス」


城の入口に落ちていたという事は、もう近くにいるはず。そう思うととても心強く感じた。

でもここまで来るまでどんな大変な思いをしてきただろう。


今頃どこにいるのか、他の皆は無事なのか…。


様々な思いが駆け巡った。



窓から空を見上げると綺麗な満月が夜を照らしている。

イグニスもこの月を見ているだろうか。


私は月に祈る。
無事でいてほしいと…。


どうか、イグニスにこの祈りが届きますように…。

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