2人の王女と2人の騎士
支度が済むと憂鬱な気持ちで式場へと向かっていた。足どりは重く、まるで足枷がついているかのようだ。
会場となる大聖堂は存在感を放つ大きな建物。
城といい、街といい、この大聖堂といい…
レイスフォールは大きくて派手なものが好きなように思える。国民性といったところか…。
大聖堂の扉の前に立つと、中からオルガンの音が聞こえてくる。
そして扉はゆっくりと開き、厳かな雰囲気の中のバージンロードを歩いていく。
皆に注目されながら、アレン王子と神父が待つ奥へたどり着くとオルガンの演奏は止まる。
「やはり、思った通り綺麗です…」
満足そうな笑みを浮かべるアレン王子に対して、私があまりにも暗い表情をしているからか、神父は一瞬困ったような顔をしたけど小さく咳払いをして式を進行し始めた。
「…では、誓いの口づけを」
ついにこの時が来てしまった。
待ってましたと言わんばかりにアレン王子が私のベールを上げる。
もう少しで私は完全にアレン王子の妃になってしまう。
顔がゆっくりと近づくにつれ、今まで我慢していた涙がついに零れ落ち、頬を伝って流れる。
イグニスは今日助けてくれると言っていた。
でもこの式が終わってしまったら…
今、口づけをしてしまえば…
もう、手遅れになってしまう。
アレン王子の花嫁になりたくない…。
イグニス…。
唇が触れそうになった時、身構えるように拳に力を入れた…その時だった。