2人の王女と2人の騎士
私は剣を拾うと、ドレスの裾を切り裂いた。
頭につけているベールとティアラも脱ぎ捨てると、剣の先をアレン王子へと向ける。
「…大丈夫、大丈夫…」
あんなに毎日のように稽古をしていたのに、いざとなると手が震える。
だってこれは稽古でない…。
人を傷つける、戦いだという事。
私は心を落ち着かせるように何度も深呼吸をして集中する。
別に殺すつもりでやらなくていい。
イグニスの手助けが出来ればそれで良いの。
そう思いながら2人の動きが拮抗したところを見極めて、その隙にアレン王子へ刃を振りかざした。
「やあっ!」
私に気づいた瞬間、素早く身を引く。
「ふっ…夫となる者に刃を向けるとは」
「無理矢理攫った上、強引に結婚させようとする人の妻になどなりません!」
「今までやけに従順だと思っていましたが、この機会を待っていたという事ですね。それ程までに強い絆で結ばれているなんて羨ましい限りですよ!…全く、私をこんなにもイライラさせるとは…っ」
そう言うアレン王子は怒りをあらわにして顔を歪めると、物凄い形相で私を睨みつけた。