2人の王女と2人の騎士
「はな…してっ…」
「離しません。あなたは私のものだ…!」
掴まれた手は段々と力が強くなり、首が潰れそうな程だ。
呼吸はままならず、抗う力も次第に弱くなっていく。
「こいつ…!セラを離せ!」
アレン王子の背後からイグニスが切りかかる。
私の事ばかり集中していたのか反応が遅れ、激痛に顔を歪めるアレン王子。どうやら背中を斬られたようで、痛みに気を取られているうちにイグニスが私を横抱きにして距離を取った。
降ろされた私は酸素を求めて咳き込む。
「大丈夫か!?ケガは…?」
「うん…っ、大丈夫よ。それより、アレン王子は…」
深傷を負って立ち上がれないのか、床に力なく倒れたままだった。
その様子を見て、イグニスは剣を持つ手に力を込め、アレン王子に向き直る。
「セラ、俺は最後のとどめを刺す。目を閉じていてくれ」
私に人を殺すところを見せたくないのか、イグニスがそう言った。
「あ…」
私が呆気に取られているうちに、ゆっくりとアレン王子の元に歩いていく。
…殺されてしまう。
自分が殺される訳でもないのに自然と体が震えた。
言葉も出せず、ただイグニスの姿を見つめるだけしか出来ない。
そして、剣の切っ先を下に向けた…まさにその時だった。