2人の王女と2人の騎士
「待って…っ、待って下さい!アレン様を殺さないで…!」
崩れ落ちた大聖堂の入口から転がり込むように走って来た女性は、アレン王子を守るように体を抱きしめていた。
「ジェシカ!?」
昨日から私の世話をしてくれた侍女のジェシカだった。
「…どいてくれ。俺はそいつを殺さなければいけない」
「どきません!アレン様を殺すなら…私を殺して下さい」
刃を向けられているのにも関わらず、怯む事なくしっかりとアレン王子を庇っていた。
抱きしめる腕は彼の側を絶対に離れようとしない力強さが表れている。
「…ジェシカ…?」
弱々しい意識の中、アレン王子は掠れた声で彼女の名を呼んだ。
ジェシカはその様子に少し安堵したような笑みを見せると、強い瞳でイグニスを見つめる。
「アレン様はレイスフォールになくてはならない方なんです。アレン様がいなくなれば…この国は終わってしまう…。次の王も彼しかいません。ですからどうか…お命だけは…!代わりに私の命を奪って下さい!」
「でも王子は…命を失ってもおかしくない程の罪を犯している」
ジェシカの必死な訴えに、イグニスの決意が揺らいでいるように見えた。