2人の王女と2人の騎士
第10章 ファルサリアへ
騒動から一夜明け、ようやくファルサリアに帰れる事となった。
まだレイスフォールは混乱しているけど、余計な問題に巻き込まれないようにあえてしれっと出発する事にしたのだ。
「忘れ物ないか?」
馬をなだめながらイグニスが言う。
「そんなのないわ。全部…ファルサリアに置いてきたんだから」
「…そうだな」
身1つでここへ来たから思い残す事も何もない。
早く帰りたい思いでいっぱいだった。
私は城に背を向けて馬車に乗り込もうとしたところで、後ろから声がかかった。
「セラフィーナ姫…!」
城からこちらに向かって来るのはアレン王子だった。
ジェシカに支えられてゆっくりと歩いて来る。
ケガもしてるし見つかったら厄介なので、見送りはいいと言ったはずなのに…。
「本当は父上も来たいと言っていたのですが、あれから寝込んでしまって…。申し訳ありません」
病気を患っているのに、昨日あんなに動いてしまったのだから無理はない。
そこまで気を遣われたら逆にこっちがいたたまれない。
「あなたも見送りなんていいから早くケガを治して下さい。…レイスフォールのためにも」
「はい、ありがとうございます。最後に…改めてお礼をさせて下さい。…私はあなたのおかけで自分がどんなに愚かか思い知りました。命を奪われてもおかしくない立場なのに、このような待遇…光栄に思います。本当に…ありがとうございました」