2人の王女と2人の騎士


そう言ってジェシカと共に土下座する勢いで頭を下げる。
昨日の今日だけど、彼は随分反省しているようで一安心した。



「セラフィーナ様の寛大なお心に感謝致します」


顔を上げたジェシカは涙を浮かべて微笑んだ。

彼女の、王子を救おうとする姿は相当な勇気がなければ出来なかった事。ジェシカのおかげでアレン王子がどこまで慕われているのか知れたのだ。






「…セラ、そろそろ」

「うん、そうね」


イグニスに声をかけられて2人に軽く会釈すると、馬車に戻る。



「イグニス?」


私が馬車に乗り込んでもアレン王子を見つめたまま動かない。しばらくそのままでいると、ようやく声を発した。





「…あんたを斬りつけた事、謝らないから」



「イグニス!」



ファルサリアにとっては処罰すべき人なのかもしれないけど、彼は王子だ。
無礼な態度を取るイグニスに一言言おうとしたところでアレン王子が私を止めるように口を開く。



「良いのです。本来ならば今頃生きてはいなかったのですから。この傷は私の戒めとして一生背負っていきます」



「…ふん。反省してればそれでいいけど」



イグニスはつまらなさそうに言い捨てると馬車へ乗り込む。

その顔は不機嫌そうだったけど何だかスッキリしたように感じられた。



そして馬車はゆっくりと動き始める。

私は段々遠ざかっていくアレン王子とジェシカを見つめ続けた。
姿が見えなくなるまで2人はずっと頭を下げ続けていたのだった。


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