2人の王女と2人の騎士
「そういえば、ケガは…大丈夫なの?」
「ああ。こんなのかすり傷だし」
気丈に振る舞ってはいるけど、包帯やガーゼが貼られた姿は痛々しいものだった。
国境付近で見えたあの白い煙…。
戦場をくぐり抜け、レイスフォール城へたどり着くまでどんな苦労があったのだろうか。
「ごめんね…私、何も出来なくて」
大人しく助けを待つと決めたのは私なのに、こんなボロボロのイグニスを見ていたら自分が情けなく思った。
「何言ってんだよ。セラはあの王子を改心させたんだぞ。誰よりも立派な事を成し遂げたと思う。それに…好きなやつを守れなかったら騎士として失格だ」
「イグニス…」
私が攫われる前…
武闘大会が始める直前に、私の事を好きと言ってくれた。
その時私は既にアレン王子の元に嫁ぐと決めていたから、嬉しいけど切ない気持ちになったのを覚えている。
イグニスがきちんと思いを伝えてくれたから私もちゃんと返事をしようと思っていたけど、結局言えずじまいだったんだ。
「ねぇイグニス」
「…何?」
あの時はレイスフォールへ行くと覚悟をしていたから、胸を張って言えなかったかもしれないけど…今なら自信を持って堂々と言えるはず。
もう何も…しがらみはないのだから。
私は向かいに座るイグニスを真っ直ぐ見つめた。