2人の王女と2人の騎士
訓練場の喧騒を離れ、風の音だけが聞こえる静かな場所に来た。イグニス…気を遣ってくれたんだ。
「どうしたんだよ。さっきからおかしいぞ?」
「何でもないって言ってるでしょ」
イグニスには知られたくない。
そっとしておいてほしいのに。
「クライドだろ」
「え、何で…」
その名が呼ばれて一瞬ドキッとした。どうしてイグニスなんかに分かるのだろう。
「あいつが何かしたのか」
「何も…」
イグニスも私がクライドの事が好きなのは知っている。クライドの話をするといつもつまらなさそうにしていたのに、何で今日は突っ込んでくるの。
「ふーん。てっきりいじめられたのかと思って笑いものにしようと思ったのに」
「違うわよ!」
「まあ話したくないならいいけど、何かされたらすぐ言えよ」
「…ありがとう」
深くは聞いてこない。でも私を応援してくれている。そんなイグニスの優しさが心に染みて、先程の事を話してしまおうか…。
「イグニス、あの…」