2人の王女と2人の騎士
第3章 片思いから…
舞踏会当日────
城には続々と招待客が集まっていてすごく賑やかだ。
遠目から見ても料理がとてもおいしそう。でも今日のドレスはコルセットでぎゅうぎゅうに締め付けられているからお腹いっぱい食べられるか心配だ。
「セラ、よだれが…」
「嘘!」
ティアに言われて慌てて口の端を拭う。
いけない、いけない。今日はいろんな人が見ているから注意しないと。
「クライドに見られたら叱られてしまうわよ」
「そ、そうね」
ティアからクライドの事を言われると、どうしてもあの時を思い出してしまう。やっと考えないようになっていたのになぁ。
「…あらセラフィーナ姫、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう…」
颯爽と歩いて来るのはティアの母様のローズマリー様。黒髪に黒の瞳はティアと同じだけど、いつも厳しい表情で少し怖い雰囲気をまとっている。それに私は久しぶりに会ったからか、挨拶をしただけなのに緊張していた。
「ティアルーシェ、分かっているわよね?無用な馴れ合いはしないように」
「はい、お母様…」
それだけ言うとローズマリー様は私たちの元から去って行った。ティアは複雑そうな顔をしているけどどうしたのだろう。
「ティア?」
私が顔を覗き込むとハッとした表情を見せた。
「何でもないわ。さ、そろそろお父様がいらっしゃる頃よ。行きましょう」
「うん…」
何でもないなんて嘘。すごく悲しそうだったし、ティアは何かを抱えているんだ。そう思いながら先ゆくティアの背中を見つめた。