2人の王女と2人の騎士
「まあまあ2人とも」
ティアが微笑みながらやって来る。
それと…クライドも一緒だ。
「まあ見て。太陽と月の団長がお揃いになったわよ」
「クライド様とイグニス様…何てかっこいいのでしょう」
周りの貴族女子たちが2人を見て囁いていた。イグニスはともかく、クライドはかっこいいし強い…。対照的な2人が騎士団長だから太陽と月に例えられて言われているけどまさしくその通り。性格も正反対だし。
「セラ、私たちも踊りましょうか」
「そうね。デザートはダンスの後に取っておくわ」
「まだ食べるのね…」
ティアは苦笑いを浮かべる。
「姫、そのような場では少し控えていただかないと」
クライドは表向きの口調でそう言った。
「今日だけいいじゃない。こんな機会だからこそ食べないともったいないわ。それより、ダンスの腕は磨いたんだから見てなさいよ!」
「やれやれ…」
その呆れ顔、今にもぎゃふんと言わせてみせるんだから。
「おい、そこで余裕こいてるやつ。お前もティアルーシェ姫の足を引っ張るなよ」
「…え、俺?」
傍観していたイグニスが間抜けな表情を見せる。イグニスはダンスが苦手だもんね。
「大丈夫だって!少しは練習したし。それよりもクライドの方こそセラに足を踏まれないように気をつけるんだな」
「何で私を巻き込むのよ!」
いちいち余計な事を言うんだから!
「はいはい3人ともそこまで。もうすぐ曲が変わるわ。行きましょう」
ティアの合図で私たちは広間の中央へ向かった。ペアを組んで歩き始めると周りから拍手が起きる。ファルサリアの王女と名門公爵家出身で騎士団長の2人。皆が注目している中、曲が流れ始めた。
元々苦手ではないダンスのステップもクライドの授業のおかげで、自信を持って踊れている。
「前よりも上達しましたね」
「ほんとに?良かった」
こっそり耳打ちしてくるクライドは距離も近いせいかとても色っぽく見える。
この時間が永遠に続けばいいのに…。
そんな淡い思いが頭をよぎる。クライドは私の事をどう思っているのだろう。
聞いてみたいけど聞いてみたくないような気持ちがせめぎ合っている。
でも今なら…
曲に紛れて誰にも聞こえないはず。
私は思い切ってクライドを見上げた。
…けど。