2人の王女と2人の騎士
後日、私が舞踏会を抜け出した事は体調不良という形で通してもらった。だから怪しまれる事も、心配される事もなく穏便に済ませられた。
あれからクライドに会うのは気まずいけど、時間の流れと剣の稽古のおかげで徐々に気にならなくなっている。
ただ失恋した事で毎日の刺激がなくなり、心にぽっかりと穴が空いたような虚無感ができてしまった。これではアレン王子の元に嫁ぐのも時間の問題だ。すぐに父様に丸め込まれてしまうだろう。
…というかこの際結婚を決めてしまった方がいいのでは?失恋してすっきりしたところには丁度いい。
「セラ?」
ティアが心配そうな顔で私を見つめる。そうだ、今はティアとお茶しているんだった。空を見ながら考え込んでいたようだ。
「あぁ…大丈夫よ」
そう言ってスコーンを口に頬張る。
「そういえばあれからクライドとはどう?」
「あ…うん…」
イグニスは分かっているけど、ティアにはまだ言っていない。
「最近のセラ、元気ないわよ?何かあったのでしょう?」
あれからティアに話をする機会はたくさんあったけど心の整理がついていなくてなかなか言えていなかった。
…今日言ってしまおう。
私の気持ちにけじめをつけるため、ティアの気持ちを知るためにも。
「…ティアは…クライドの事どう思ってるの?」
「えっ…」
驚いた表情でティーカップを持つ手が止まった。
「クライドはただの幼なじみよ」
「…違うわ」
「セラ…」
「ティアは好きなんでしょ?クライドの事…」
「……」
私の事を気遣って言わないのだろうか。それとも私には言えないのだろうか。
俯いて黙ったままのティアをじっと見つめて答えてくれるのを待った。
「…好きよ」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声を私は聞き逃さなかった。しかしティアは青ざめた顔色で、ばつが悪そうな様子をしている。
「そうなんじゃないかなって思ってたの。本当の事を話してくれてありがとう」
口に入れたクッキーがとてもおいしく感じられる。それに胸のつかえが取れたようなすっきりとした気分だ。