2人の王女と2人の騎士
「セラ、ごめんなさい!」
ティアは勢いよく頭を下げて謝った。
「セラがクライドの事が好きって言ってた時から私も好きだったの。でも私には恋愛する勇気もないからセラを応援しようって思ってて…」
そうだったんだ。
そうするとかなり前からという事になる。長期間気持ちを押し殺して過ごしていたなんて申し訳なく感じた。
「その事なんだけど、私…諦めたの」
「え?」
「クライドはティアが好きなのよ」
「えぇ!?」
びっくりした。普段冷静なティアが大きな声を出すんだもの。おまけにテーブルに手をついて立ち上がるほど驚いているようだ。
「両思いなのよ、素敵じゃない」
「で、でも…。私は恋愛なんて出来ない。このまま秘めているだけで十分よ」
そんなのもったいない。お互いの気持ちが通じ合っているなんてすごく羨ましい事なのに。
「あのね、私はもうすぐ嫁ぎに行くわ。だからいいの。その方が苦しまなくて済むわ」
「でもそれは私だって同じよ?いつかは嫁ぎに…」
するとティアはゆっくり目を閉じて首を横に振った。
「いいえ。もう…すぐなの。お母様が3日後にお相手の方を連れてくるって。だからこのままでいいの」
揺るぎのない芯のある決意の表れが瞳に映っていた。
「ティア…」
3日後なんて急すぎる。それに結婚が決まれば、もしかしたら1ヵ月もしないうちにいなくなってしまうかもしれない。
ティアとの別れが近づくのも寂しいけど、何よりクライドへの思いを断ち切っていいの…?
ティアはそれで本当にいいの?
急な話で私の気持ちも追いついていない。
「さあ、そろそろ中に入りましょうか」
丁度日も傾いてきたからお茶の時間は終わってしまう。自分の思いを打ち明けてすっきりしたはずなのに何だかもやもやしている。
違う意味で振り出しに戻った気分だった。