2人の王女と2人の騎士
翌日────
残された日は今日を含めて2日。
私が出来る事は少ないし、ティアにとっては迷惑かもしれないけど、やれる事はやってみよう。ティアは絶対我慢しているはずだから。
「イグニスー!」
私は訓練場にいる彼の名を呼んだ。すぐ気づいたようで振り返ると片手を上げて返事をしてくれた。
「どうした?今日は稽古の予定はないはずだろ?」
「うん。そうなんだけど、クライドがいるかなって」
「あいつなら今日から1週間いないぞ。国境の視察だとさ」
「そう…なの」
クライドが外出しているなんてタイミングが悪い。それに国境の視察だなんて。
前に兄様も行っていた所と同じなのだろうか。隣国…大国のレイスフォールが相手だと何事もない事を祈るしかない。
「クライドが帰って来なければ意味がないわね」
ティアのお見合い後でないと行動出来ない。
「そういえばティアの見合いが近いんだったな。それ関係だろ?」
「イグニスも知ってたのね。じゃあクライドも知ってるの?」
「クライドから聞いたしな」
「何か言ってなかった?」
「いや、何にも」
クライドの事だから何食わぬ顔でいただろうけど、本当はどうなんだろう。クライドもこのままティアを見送ってしまうのだろうか。あの2人は似たもの同士だから十分ありえる。
「というかお前はいいのか?」
「…何が?」
「ティアに譲るって事だぞ?」
「うん…。もういいの。私は十分楽しんだし、今度はティアに幸せになってもらいたいから」
王女らしくないくらい結構自由な生活をしてきた。剣を振り回したり、勉強をさぼったりして。
でもティアは人一倍努力して、王女らしくあろうと振る舞ってきたから少しは自由な恋愛したって許されるはずだ。
多分ティアはお見合いの方と結婚してしまうと思う。その前にクライドに気持ちを伝えてほしい。
この城で人を好きになった事、忘れてほしくないから…。
本当は2人が結ばれてほしいけどそれは私が口出しする事ではないから、どんな結末になろうと2人が納得するならそれでいい。
「俺は4人でいるのが当たり前だと思ってる。だからセラとティアが陛下の道具のように扱われるのが気に食わない」
「王女に生まれたのだから仕方ないわ。王子だったら嫁ぐ事もなかったんだろうけど」
「うーん…それはちょっと違うな。そうだな…俺たちが一般人だったらこんな風に悩む事もなかっただろうな」
「あぁ…確かにそうかもね」
イグニスの言葉に珍しく賛同してしまった。
だって私たちに身分がなかったら自由に過ごせるし、恋愛だってもちろん自由だ。
国民の女子たちはお姫様に憧れるというけど、私は一般人になりたい。
ないものねだりってこういう事なんだね。
「あ、そうだ。今度4人で旅行に行かない?思い出作り!」
「いいな、行こうぜ!」
どう足掻いても現実は変えられない。ならせめて最後に4人で行っておきたい。
思いっきり遊んで思いっきり笑って、忘れられない旅行にしようと決めたのだった。