2人の王女と2人の騎士
「ふふ、2人は相変わらず仲良しね」
裏門をくぐって来たのは私の母様、ジュリアだった。ミルクティー色のウェーブした髪は、私の髪質と一緒。
どうやら見送りに来てくれたようだ。
「イグニス、この子が無茶しすぎないようにしっかり見張っておいてね」
「はい、任せて下さい!」
「もう母様。子どもじゃないんだから言われなくたって大丈夫よ」
私がお転婆なせいか、母様は昔から心配性で過保護気味だ。私だって剣術を習っているから自分の身くらい守れるし、その気になればティアだって…。
後ろにいるティアに目をやると、母様を見つめながら微笑んでいた。
そういえばローズマリー様は来ていないみたい。娘が出かけるというのに見送りに来れないなんて、よほど忙しいのだろうか。
「セラ、イグニス!そろそろ出発するわよ」
「分かった!…じゃあ母様、行ってきます」
「ええ、気をつけて。楽しい思い出、たくさん作れるといいわね。行ってらっしゃい」
穏やかに微笑む母様に別れを告げて手を振った。
「よしよし、いい子ね。よろしくね」
これからお世話になる馬の鼻筋を撫でてから、慣れた手つきでまたがる。するとティアも私の後ろに乗ろうと駆け寄ってきた。
「ティア、私じゃなくてクライドの方に行って。1人用の馬具しかついてないの」
「そ、そう…。残念だけど分かったわ」
残念なんて顔をしていない事は、頬が赤くなっているのを見れば一目瞭然だった。
実はこれも私の計画した1つ。
馬に2人乗りなんて自然と密着できるし、もうドキドキ間違いなし!
「ねぇクライド!今から口調は崩してくれるよね?」
「…まあ仕事ではないし、周りの目もない。仕方ないな」
ティアがいると敬語のままになってしまうからあらかじめ言っておこうと思っていたのだ。
…よし、これで準備万端!
「初っぱなから抜かりないな…」
小さな声でイグニスが呟いた。
だって最高の思い出にするためなんだから当たり前!
「では準備も整ったところで、出発進行ー!」
私の掛け声で馬が動き出し、目的地へと向かい始めたのだった。