2人の王女と2人の騎士


side ティアルーシェ



ファルサリア城にもバラは咲いているけれど、ここのバラはたくさんの数があって珍しい色も多い。それに自然豊かな土壌で育っているからか美しさが違う。手入れも行き届いているし大切にされているのが分かる。

間近で見てみると香りが鼻をくすぐって、気持ちが安らぐようだ。


「トゲがあるから気をつけて」

「ええ、ありがとう」


こうやって砕けた口調で話してくれるのは私にとって久しぶりだった。王女と騎士という関係だけれど、改めて幼なじみなんだと実感出来て嬉しい。これもセラのおかげ…。




「…セラとイグニスは?」




後ろからついてきているはずの2人の姿が見えない。そういえば足音も話し声も聞こえなくなっていた気がする。


「さぁ…。他のところを見ているんじゃないか?そのうち合流出来るだろう」

「そうね…」





…そうしたらクライドと2人きり?


馬の事といい、今といい、これはセラが何か企んでいるのかしら?



「どうかしたのか?」

「な、何でもないわ…」



いけないわ。

意識したら急に緊張してきた。どうしよう…無言の時間が辛いわ。



「さっ最近騎士団の方はどう?忙しいのかしら?」


当たり障りのない質問を問いかける。



「そうだな。新人たちを指導するのは手がかかる。その分素直さがあっていいんだけどな。…それにイグニスは剣を降っている時はいいんだが、報告書は滅茶苦茶で手直しするのにも骨が折れる」

「そうなの…。第1騎士団長様は大変ね」



責任感の強い彼の普段の様子が垣間見えるようだ。





「「……」」





あぁ、また無言…。

こんな時セラならどうしたのだろう。
口下手な私は、ここにいないセラに頼りたくて仕方がない。

えーと、えーと…
何か話題は…。

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