2人の王女と2人の騎士
「ティアはお見合いどうだったんだ?」
「…優しそうな方だったわ」
話題を出してくれたのは嬉しい。
だけど、お見合いの話はクライドにしたくなかった。せっかく気持ちを切り替えようとしていたのにこれでは…。
「それは良かった。仲良くやっていけたらいいな」
そう言ってクライドは目を細めて微笑んだ。
…そんな顔で私を見ないで。
優しそうな方なのは間違いないと思うけれど、見ず知らずの王子様より、この優しい微笑みが隣にある事を願ってしまう。
「…好きなの…」
「…ティア?」
はっとして我に返ると、慌てて口を手で覆う。
私、今…何て言ったの…?
「ク、クライド、私…」
咄嗟に誤魔化そうと思ったのだけれど、彼の顔を見たら嘘をつこうだなんて思えなかった。
私の瞳を真っ直ぐに見つめる彼の瞳に射抜かれたようで視線が逸らせない。
そして私の中から言葉を吸い取るかのようなエメラルドグリーンの綺麗な眼差しだ。
「好きです…クライドの事が…」
「…っ」
頭で考えるよりも先に口から言葉が出てしまっていた。そんな私をクライドは驚いて見ている。
王女らしくない言動に愛想をつかせてしまったかしら?
こんな私を軽蔑した…?
「な、なんて冗談よ。セラの真似をしてみただけよ…」
取り繕った嘘はクライドに通じていなかったようだ。
だって今、彼の腕の中にいたのだから。
何て温かいのだろう。
自分より大きな人に包まれたのはいつ以来かしら…。
「突然すまない。…でもこうしたくてたまらないんだ。…俺もティアが好きだから」
「クライド…」
セラが言っていたのは本当だった。
クライドも私と同じ気持ちでいてくれるんだ…。
伝えてはいけないと思っていた思い。
消してしまわなければいけないと日々考えていた。
でもこんなにも嬉しくて、心が軽くなって、胸のつかえが取れたような気分になれた。
今はただ、クライドの温もりを感じるくらいは許されてほしいと願うのだった。