2人の王女と2人の騎士
side セラフィーナ
バラ園から出た私たちは、近くの草むらに隠れながら2人の様子を伺っていた。本当は見ようと思わなかったけど、どうしても気になってしまって…。
でも、うまくいったようね。
「このまま2人っきりにさせてあげましょ」
「そうだな」
親心のような気持ちで見届けた私とイグニスは安心してバラ園から離れていった。そして完全に見えなくなってから、思わずクスッと1つ笑みを零してしまう。
もうクライドに対するモヤモヤした思いもなくなっていると。私もようやく断ち切れたのだと実感していた。
「あの堅物がティアの事好きだなんて微塵も感じなかったなー」
「クライドはずっと心の奥に思いをしまっていたのよ。ティアもそう。お互い似た者同士なんだから」
不器用で素直になれない2人。王女らしく、騎士らしくあろうと立場に縛られて本心を出せずにいたんだ。
「あいつらは考えすぎなんだって。俺みたいに軽くいかないと」
「イグニスは軽すぎなのよ。騎士団長様なんだから、クライドみたいにストイックでクールにしないと」
イグニスはいつもヘラヘラしてて、どうも威厳がないのよね。騎士団長様ってもっと大人でかっこよくって強くて…。ピンチに颯爽と現れてあっという間に敵を倒してしまう…そんなイメージが幼い頃からある。
「セラだってティアみたいにお淑やかな王女を目指した方がいいんじゃないか?馬に乗るは、剣も振り回すわ…そんな王女他にいないだろ」
「た、確かに私みたいな王女はいないと思うけど、こんな王女がいたっていいでしょ!」
好きで王女に生まれた訳ではないし。
どうせなら男に、王子に生まれれば良かった。
…でもそれだったらクライドを好きにならなかった。恋する事が出来ずにいただろう。
そういえばあの時の事、まだお礼をしていなかったな。
「イグニス、舞踏会の時は…ありがとう」
泣きじゃくる私の側にずっといてくれた彼。
普段は何かと突っかかってくるのに、あの時は優しく接してくれた。
「別に何もしてねぇよ」
そう言ってそっぽを向く彼の顔は、きっと照れて赤くなっていると思う。
まあこれは触れないでおこうと思い、小さく笑うだけにしておいた。