2人の王女と2人の騎士
そして、今日1日はティアとクライドを2人っきりにするために必然的に私たちも2人で過ごした。馬に乗って原っぱを駆けたり、昨日と同じく剣の稽古をしたり、体を動かす事をしていた。
イグニスは私の事を王女としてはではなく、幼なじみとしてずっと接してくれるから気を遣わなくて済む。何より考える事が一緒だから何をするにも馬が合うし、飽きない。
「そろそろ屋敷が見えてくるわね」
沈み行く夕日がどことなく寂しさを物語っているようだ。明日は城に帰らなければいないから。
「よし、最後にあそこの木まで競走しようぜ。…よーい、どん!」
「あ、待ってよ!」
急に仕掛けられたけど、かけっこだったら負けない自信があった。足なら私の方が速いはずだけど…。
イグニスの姿はどんどん遠くなる。
あれ、私の足遅くなったかな…。
勝ったのはイグニスだった。
幼い頃は、いつも私が勝っていたのに。
「イグニス速すぎだよ」
「そうか?いつも通りなんだけど。セラがこんなに遅いなんて足が鈍ってるんじゃないか?」
「そうかな…」
城で剣の稽古をする時は走ったりするから、そこまで鈍ってはないと思う。
そうしたら考えられるのはイグニスだ。
思い返すとこの1年で身長が伸びた気がするし、体つきも筋肉がしっかりついている。
そういえば抱きしめられた時の腕も男らしくて…。
…って何考えてるの私。
イグニスよイグニス!
バカで剣だけがとりえのバカなのに!
「…おーい、大丈夫かー?」
「だ、大丈夫よ!」
とりあえず落ち着こう。
私の見間違いなんだわ。
「ならいいけどさ。…セラ、今日の夜、外に出られるか?」
「え、うん。いいけど」
「じゃ決まりな。くれぐれもティアとクライドに見つからないように来て」
「分かったわ」
一体何があるのだろうかと疑問に思いながら、屋敷へ帰るのだった。