2人の王女と2人の騎士
屋敷に戻ると、入口の扉の前でクライドが仁王立ちして私たちを待ち構えていた。
こうなっては逃げる訳にはいかないから、大人しく正面から近づくと、にっこりと笑みを見せたクライドが目に入った。
「おかえりなさい、2人とも」
穏やかな優しい声色。
とてもクライドとは思えないくらいだったが、急にいつも通りの恐ろしい形相に変わり、私たちを睨みつけた。
あのクライドが見逃すわけないですよねー。
私とイグニスは正座させられて、こっぴどく叱られてしまった。
いくら旅行中だとはいえ、こんな夜更けに王女を連れ出すのは危険だという事をイグニスに怒った。
そして私には王女としての自覚を持って行動しろと。
クライドのお説教は止まらず、夜が明けてしまうのではないのかと思ったところで、彼の後ろで控えていたティアの一言でやっと治まったのだった。
おかげで寝不足のまま朝を迎えてしまった。
今日は城へ帰る日。
屋敷の従者たちに挨拶をして、馬にまたがる。
「ふあぁ〜。眠い…」
道中何度あくびが出たことか。
このままでは眠気に負けて落馬してしまいそうだ。
「おいおいそのまま馬から落ちてケガなんて事はやめてくれよ?」
イグニスにそんな事言われるなんて、よっぽど体が揺れているのだろうか。
「クライドー!少し休憩しよう!眠り姫になりそうなやつがいるからな」
「…仕方ないな」
イグニスの計らいで、小さな川が流れる水辺で休む事になった。
川の水をすくって勢い良く顔にかける。
「冷たいっ」
ひんやりとした感覚が、少しばかりだけど眠気を覚ましてくれた。
こんな事になるならイグニスについていかなければ良かった…
とは不思議と思わなかった。
逆に行ったからこそ、あんなに綺麗な風景を堪能出来た。それはこの旅行で私にとって1番と言っていい程の思い出になったと思う。
それにティアにとっても…。