2人の王女と2人の騎士
ー幼少期編ー
あれは私が7才くらいの時だったかな。
温暖な気候のファルサリアでは、雪が降ることは滅多になったのだけど、その年だけは異常気象で大雪が降った時があった。
「ねぇねぇ母様!今日も雪が降ってる!」
「そうね、綺麗ね。でもお外へ出ちゃだめよ」
「えーまたー?」
生まれて初めて見る雪を間近で見たいのと、触ってみたいのと…とりあえず好奇心が抑えきれずにうずうずしていた。
そんな私を予想していたのか、母様は毎日のように私に付きっきりで、抜け出す隙がなかった。
「どうして私だけ出ちゃだめなの?イグニスとクライドはお外で遊んでるのに!」
窓から中庭を眺めると、雪玉を作って投げ合っている2人の姿が見えた。どう見ても楽しそうにしか見えなくて、私も混ざりたいと足をバタバタさせている。
「あの子たちは男の子だからいいのよ。あなたは女の子だし、王女なのだからケガでもしてあざをつくってはいけないの。前だって膝を擦りむいて痛い痛いと泣いていたじゃない」
「そうだけどー…」
いくら言い聞かせても通じない私にやれやれと肩を落とす母様。
そんな時、失礼しますと声がかかり、騎士団の隊員が部屋を尋ねてきた。
大雪が降った事で、父様は城を出て各地で対策に追われていたから、今城を仕切っているのは正妃である母様だった。
「まあ、それは大変!」
母様が慌てた様子で隊員と話した後、私の側にやって来た。
「セラフィーナ、母様少しお仕事があって部屋を出なければいけないの。ここで大人しく待っててくれるからしら?」
「うん!分かったわ!いってらっしゃい」
元気に頷く私に安心した様子で微笑むと、母様は部屋を出て行ってしまった。