2人の王女と2人の騎士
第5章 母と娘と妹
side ティアルーシェ
ファルサリア王国の第2王女として生まれた私。お母様は昔から厳しい人で、母の言う通りすればいいのだと思い込んで育ってきた。
でもそうではないと感じたのはつい最近。
クライドと思いを確かめ合った日から、私の幸せはどうなる事なのだろうと考え始めた。クライドの事を好きならなければこのまま王子と結婚して、波風立てずに過ごせたのだろうけど、思い通りにならないのが人生ってものね。
せっかくのお見合いを断ってまで選んだのはクライド。
王女は黙って親の決めた相手と結婚すれば良いと思うのは違うんだとセラに教わった。
おかげで私は自分の意思で行動する事が出来たのだ。
本当にセラには感謝してもしきれない。
「お母様、ティアルーシェです」
「…入りなさい」
お母様が過ごしている離宮へやって来た。
城内とは違って、いつ来ても静かなところだ。
部屋のドアを開けると、お母様は本を読んでいた。
「その本、いつも読んでいますね。お気に入りなのですか?」
その本は私も大好きなものだった。こういうところは親子なのだと感じる。
「そんな事を言うために来たのではないでしょう?要件は何かしら?」
本をパタッと閉じて、冷たい口調で私に向き合った。怒っている理由が私なのは分かっているけど、私だって引けない。
「お見合いの件は申し訳なく思っています。…ですが、私はクライドとの事を諦めるつもりはありません。どうか、お許しを…」
「何度言っても無駄よ。あなたは王子と結婚させると決めているの。それが昔からの私の夢。その夢を壊そうというの?」
「私にだって叶えたい夢が…」
「母の夢は娘の夢よ。私は一人娘のあなたを苦労しながら育ててきたというのに…。陛下はティアルーシェを差し置いて、セラフィーナ姫を王子と結婚させようとしているのよ。…正妃の子だからって、そんな事許せない…!」