2人の王女と2人の騎士
「離して下さい」
イグニスの凛とした声が聞こえる。
イグニスの顔は見えないけど、彼が掴んでいた力を弱めるのは分かった。
「何ですかあなたは。誰に向かって口をきいているのですか?」
「申し訳ございません。ただ姫様は昨日から体調が良くないのです。遠いところお越しいただいて悪いのですが、本日はお引き取り願えますか」
「…そうですか」
冷たい声色でイグニスの肩を押し、イグニスは少しよろめいた。
そしてすぐに笑顔に戻ると
「また来ますね、セラフィーナ姫」
と言って訓練場を後にした。
やっと諦めてくれた…。
嵐が過ぎ去ってほっと一息つける。
「大丈夫?」
よろめいたイグニスに駆け寄る。
「ああ何とも無い。それにしても厄介なやつに付き纏われてるな。気をつけろよ」
「うん…ありがとう」
口の悪いイグニスがあんな風に大人な対応をしている姿、初めて見た。
…にしてもあの人は何度城に来るつもりなんだろう。
あの方はアレン・ロックス・レイスフォール。
隣国レイスフォール王国の王子で、少し前から頻繁にファルサリアに来るようになった。というか私に会いに…。
私なんかよりティアの方が絶対相性良いと思うんだけどなぁ…と来る度に思っている。