2人の王女と2人の騎士
side セラフィーナ
今日はレイスフォールからアレン王子が来ている。前回は私が逃げてそのまま終わってしまったので、今回は父様直々に命令を受けたから逃げる訳にはいかない。
「本日は姫のご機嫌がよろしいようで安心しました。安心してじっくり語らう事が出来ますね」
「そうですね…」
ぎこちない笑顔を浮かべながら紅茶をすすった。この2人だけの空間が息苦しくて仕方ない。
はぁ…早く時間が過ぎてほしい…。
「ところで、私がファルサリアへ来てこれで5回目です。そろそろ姫の返事をお聞きしたいのですが」
へ、返事かぁ〜。
何にも考えてない…。
もちろん結婚する気は一切ない。
ただどのように誤魔化そうかと悩んでしまう。
「もう少し時間を下さい」
これだけしか言えなかった。
こんな言葉を言いながらも舞踏会の時に父様が、行動を取ると言っていたのを思い出す。
アレン王子もはっきりと返事を求めてきたし、もう限界がきているのかもしれない。
次にあった時は、父様に言ってこの縁談を断ってもらおう。
ティアがクライドとの道を選んだように私も…。
「…じらしますね。何を迷っておられるのですか?もしや、他に好きな方がいるのでは?」
「え…」
一瞬心臓がドキッとした。
「そして相手は私に無礼な口をきいたあの騎士でしょう?」
どうして…どうしてそう思ったのだろう。
というか私はイグニスの事が好き…?
「図星ですね」
まるで私の疑問を肯定するかのような言葉だった。
その時初めて、自分はイグニスの事が好きなのだと気がついたのだ。
クライドを好きだった時とは違った感情があったから、自分でもこの思いが何なのか戸惑っていた。
「かわいそうに…。叶わぬ恋心を秘めたまま私と結婚する事になるとは…」