2人の王女と2人の騎士
そう言うとアレン王子は立ち上がって私の腕を掴む。
「な、何をするのですか?」
言い終わるか終わらないかくらいのところで、私の目線がグラッと揺らいだ。目の前にはアレン王子の顔が見える。
そこで初めて、私はソファに押し倒されたのだと分かった。
「私は欲しいものは力ずくでも奪いたい主義なんです。いつまでも待たせると、今すぐに私のものにする事だって出来るんですよ?」
そう言うアレン王子はにこやかな笑みを浮かべるが、目は笑っていなく、恐怖さえ感じる。
この状況に私はどうする事も出来なくて、ただ震える事しか出来なかった。
そうしているうちに掴まれた腕に力が入って痛くなっていく…。
どうやら彼は本気らしい。
「嫌がる顔も良いものですね。セラフィーナ姫…」
アレン王子の指が頬から顎をなぞり、ゆっくりと顔が近づいてくる。
だめ…もう耐えきれない…!
「ごめんなさいっ!」
触れられるのが嫌で、体が反射的にアレン王子の胸を押し上げていた。
「なっ…!」
彼の体は私から離れていき、予想以上の力が入ったのか床に思いっきり打ちつけられていた。
「だっ大丈夫ですか!?」
ドンッと大きな音が出たから逆に心配になってしまった。
「な、なんて怪力な姫なんだ…!あなたがそんな方だとは思わなかった」
先程までの余裕な態度はどこへ行ったのやら。
怯えるような表情で私を見つめている。
そ、そんなに力強かったかな。
男の人にとっては私の力なんてそれ程でもないと思うんだけど…。
「本当にごめんなさい。お怪我はありません…」
「ち、近づくな!…もういい、私は帰る!」
襟元を正して何事もなくスッと立ち上がると、そのまま部屋を出て行く。残された私は呆気に取られてしばらく扉を見つめていた。
…逃げられたって事?
あれ、何で立場逆になってるの?え?
「姫様!いかがなさいました!?」
大きな音が出て驚いたのか、数人の兵が部屋に駆け込んで来た。
「…大丈夫よ…」
訳が分からないまま、お開きになるのであった。