2人の王女と2人の騎士
あれから数日後、レイスフォール王国からこの縁談はなかった事にしてほしいと伝達があった。案の定、父様にはこっぴどく叱られてしまったけど、こんなお転婆姫は王子の妃として相応しくないのだろう。
「はぁ…あなたという人は…」
私の話を聞いてクライドはやれやれと呆れている。
「でも元はといえばアレン王子の方が悪いじゃない。…まあ私も突き飛ばしたのはいけなかったと思うけど」
女が男を突き飛ばすなんてありえないよね。
しかも王女が王子を…って。
やりきれない思いを頭の中でぐるぐると巡らせながら、兵の訓練を指揮しているイグニスを見た。
こうやって眺めていると立派な騎士団長なんだなと思う。16才なのに年上の兵士が多い中、皆を引っ張っている。昔はただのいたずら好きな子どもだったのに、いつの間にか成長しちゃって…。
「断るにしても穏便に済ませていただきたいですね。レイスフォールは強大な国ですから万が一何かあってからでは困ります。…ただ、セラフィーナ様とはいえ女性に乱暴するのはよろしくありませんね」
「クライド…」
〝とはいえ〟は余計な一言だけど、クライドがそう言ってくれるのは嬉しかった。
クライドの言葉なら素直に受け取れるし、信頼出来る。
…そういえば最近ティアの姿を見かけない。
今日はクライドも訓練場にいるから一緒に来ているのかと思ったのだけど…。
「今日はティアと一緒じゃないのね」
「なぜ俺に聞くのです?逆にこちらが聞きたいですよ」
という事はクライドも会っていないんだ。
またお気に入りの本でも見つけて部屋で読み漁ってるのかな?
「数日前にローズマリー様を説得すると言ってから1度もお見かけしていません。…うまくいっていないのでしょうか…」
「そうなの…。私も心配だし、少し様子見てくるわ」
「ありがとうございます。よろしく頼みます」
私ならクライドよりもティアの部屋に行きやすいし、私も途中経過がどのような感じなのか聞きたかった。
自室に戻り、動きやすい服装からドレスに着替えるとティアの部屋に向かった。