2人の王女と2人の騎士
慣れた足取りでティアの部屋まで来ると、いつものように扉をノックした。
「ティア!私よ、いる?」
返事がない。間を置いて何回かノックしても静かなままだった。
「おかしいなぁ。部屋にいないのかな?」
「ティアルーシェ様をお探しですか?」
部屋の前で考え込んでいると、1人の侍女が声をかけてきた。
「そうなの。見かけなかった?」
「ティアルーシェ様ならローズマリー様のいらっしゃる離宮におられます。数日前からそちらでお過ごしですよ」
数日前から…?
という事はここにはずっといないって事?
そう考えると何だか嫌な予感がしてきた。
「分かったわ。ありがとう」
いても立ってもいられず、私はすぐに離宮へ向かった。
ローズマリー様が普段過ごす離宮はいつも兵が厳重な警備をしていて、私でさえ簡単に入る事は出来ない場所。昔はティアもここで過ごしていたから、遊びの誘いでよく足を運んだものだ。大抵は入口で足止めされていたけど。
そして今日も…。
「セラフィーナ様?…失礼ですが、本日はローズマリー様から許可をいただいておいでですか?」
「ないわ。でもティアがいるんでしょう?少しだけ会わせてもらえない?」
「ですが…ローズマリー様の許可がないと…」
やっぱり難しいか。
それならティアに来てもらうように頼むか…。
「…セラ?セラなの?」
扉の向こうから間違いなくティアの声が聞こえた。
「…セラを通してあげて」
ティアの一声で兵は扉を開け、私は離宮の中に入っていった。