2人の王女と2人の騎士
side ティアルーシェ
今日も庭園に来ては池を眺めたり、鳥のさえずりを聞きながら本を読んだり…毎日同じ風景の中にいるのが息苦しくなってきた頃だった。
「…何だか騒がしいわね」
ここは城の敷地内にあるけれど、まるで別世界にいるような感覚になる程静かなところだ。だから人の声が聞こえるなんて滅多にない事で、入口から聞こえる声にすぐ気がついた。
どうしたのだろうと行ってみると、毎日のように顔を会わせていた私の妹…セラの姿があった。
今お母様は離宮を離れているから、少しの間ならバレなければ問題ないだろうと思い、セラを中に招き入れた。
「ティアがここにいるなんて驚いたわ。私も久しぶりに来たけど昔と全然変わらないわね」
セラが庭園をキョロキョロと見回しながらそう言った。確かに私も来た時同じ事を思った。何だかこの場所だけ時間の流れが止まったような錯覚を覚える。
「いきなり押しかけてごめんね。最近ティアを見かけないし、部屋にもいなかったから心配で…」
「それで来てくれたのね…」
「…ローズマリー様の説得、うまくいっていないんでしょ?」
「…そうね、でも大丈夫よ。…そろそろお母様が戻って来てしまうかもしれないからセラも行かないと…」
せっかく来てくれて嬉しいけれど、これ以上セラに心配をかけたくない。今まで助けられてきたのだからこのぐらい自分で何とかしないと。
「行かない」
「え…」
きっぱりと言い張って、私の隣に座り込む。
「だってティア、すごく悲しそう顔してるから。そのまま放っておける訳ないじゃない。…私に話してくれない?」
「セラ…」
話したら気持ちは楽になるかもしれない。
けど、お母様は裏切れない。
話したいのに話せない。
話せないのに話したい…。
2つの気持ちがせめぎ合ってどうしたらいいか分からなくなる。